侃食道:その1/実は粗食派

「食あれば楽あり/小泉武夫著」より

美食家で知られる、開高健さんや山本容朗さん、そして近年では、あの食魔人・小泉武夫さんと…食道楽による食道楽作品の挿し絵や装画を請け負うことが多くありました。作家や読者の皆さんからは「食べている姿が、もう本当においしそうで…」という、お声をいただいておりました。その描きっぷりから、佐々木侃司自身も相当の食道楽では、と思われている方も多いのではないでしょうか?しかし、案外「粗食派」でして、所謂グルメではありませんでした。むしろ、食に対する好奇心というものは、無かったと言ってもいいぐらい。外食をあまり楽しむ方ではありませんでしたし、「旨いものを食べる」ためだけに、わざわざ遠方に出かけるということも、ほとんどありませんでした。
もちろん、人として生きている以上、食べることは好きでしたし、旨いものは好きでした。ただ「旨い」にたいする、こだわりと言いますか、感性が何だか少々ヒネクレてはおりましたネ。
「粗食を愛す」と書けば高尚に思えますが、貧乏くさい食事を“わびしく”楽しむのが好きだったのです。納豆ゴハンに卵かけゴハン(昭和40年代までは卵は貴重品でしたが)芋ガユなどなど…。寿司屋に行っても食べるのはマグロの赤身、そして稲荷に海苔巻き。
「食」に関しては、あまり新しいものを追っかける方ではなく、子どもの頃から馴染んだ味を好みました。彼にとって「美味しい」は「懐かしい」が、かなりダブっていたようでした。
それと缶詰め好きでした。それも「○○の缶詰めの味が好き」というよりも「1人で缶詰めを開けて、コッソリとそれを食す」というシュチュエーションと言ますかディテールに対して「たまらんナぁ」という喜びがあったみたい。
不定期連載(?)「侃食道」では、カンさんの愛した、食事・食材、そしてお店をご紹介していきます。デハデハ、今日はこの辺で。