聖母メアリー/その1

kan-art2006-02-21

1972年より、非常勤講師として大阪芸術大学に通いだしましたが…。そこで異様な光景を目にすることとなります。こちらに1頭、あちらに2頭…ワン子、ワン子、ワン子であります。芸大キャンパス内は、野良犬天国でありました。大阪芸術大学は小高い丘の上にキャンパスが拡がっております。ここに通う学生たちは毎日、校門をくぐった直後“芸大坂”と呼ばれる旧勾配の坂道を昇り学び舎へと向うのですが(教師は教員バスが坂の上まで運行してますから、歩きません)そんな彼らについて、或いはエサを求めて何の気なく芸大坂を昇ってしまったワン子たちが、数多くいたわけです。ご存知のように犬という生き物は、昇り坂を駆け上がるのは得意ですが、下り坂はからっきしダメであります。それにキャンパスは彼らにとって広すぎるため、ウロウロしているうちに出口が分からなくなります。しかし、特別還らなければならない所があるわけではないので、多くのワン子はそのままキャンパスに住み着いてしまったのであります。そして、ここは彼らにとってまさに理想郷でありました。保健所のオッサンに追いかけられることもありませんし、学食(学生食堂)や購買部のあたりをウロウロしていれば、学生たちに食べ物を分けてもらえます。これは決して餌付け行為ではなく、互いに癒し、癒され、そして互いの自由は尊重し合う実にイーヴンな関係であります。そんなワン子の中にあって伝説的存在となっていたのがメアリーと呼ばれた雌犬でありました。(続く)