弟のこと

カンさんには、ケンさんという弟がおりました。自由奔放…ということにおいては、むしろカンさんよりも遥かに上だったかもしれません。若いころは、行方不明になることも度々あったようでした。「オレは兄さんとは違う!」「オレはケンのような生き方はせん!」反目し合うことも多かったようです。一時は本当につき合いが途絶えた時期もありました。しかし、今思えば、やはり似たもの兄弟だったようにも思えます。父の法事で、十数年ぶりに顔を合わした2人。最初の言葉は「ヤぁ」でもなく「久し振り」でもなく…カンさんの黒い頭を見てケンさんは「何やソレ!染めとんのか?!」「アホか!お前こそ何や〜?ジジィみたいになりやがって!」…以来十数年間、2人は兄弟に戻りました。
そのケンさんも、先日あの世へと旅立ちました。また豪快な人がひとりこの世を去りました。レントゲン技師として、長年医療の現場で働いてきたケンさんは「自分の死後は、その遺体を検体に」と希望されていました。その役目を終えてから、遺骨は家に戻ります。何はともあれ、お疲れさまでした。あちらで、また仲良く兄弟ケンカしてください。